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新型コロナウイルス感染症患者のディープ免疫プロファイリングのためのハイパラメーターフローサイトメトリー

新型コロナウイルス感染は、軽度の症状や無症状状態から、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)などの中等度から重度の呼吸器疾患、多臓器不全、死に至るまで、さまざまな臨床像を呈します。身体によって誘導される自然免疫防御には、パターン認識受容体(PAR)が関与しています。PARは、シグナル伝達経路を介して数々の転写因子を活性化し、それにより最終的に各種のインターフェロンやケモカインが分泌されます。続いて適応免疫応答が起こり、防御機構が発動しますが、発動しなければ炎症性サイトカイン放出の増加(サイトカインストーム)を伴う重度の感染に至ります。これらの免疫応答の性質や、これらの免疫応答に個人差が存在する理由は、依然として十分に解明されていません。

 

ディープ免疫プロファイリング法は、個人の免疫応答の性質を完全に理解するのに役立ち、免疫応答の個人差を明らかにして、この多様性を疾患の臨床パターン・重度・進行と関連付けるために用いることができます。高次元フローサイトメトリーは強力な手法であり、免疫応答の性質と多様性を正確に理解するためのより詳細な情報が得られます。

 

「Deep Immune Profiling of COVID-19 Patients Reveals Distinct Immunotypes with Therapeutic Implications」 という文献において、Mathewらは高次元フローサイトメトリーを用いて、新型コロナウイルス感染症患者(n=約125)の免疫プロファイルの全体的分布を明らかにし、それぞれの免疫プロファイルの免疫シグネチャーを調べています。この観察研究から、Mathewらは以下に挙げるいくつかのパターンを検出しました。

 

  • 健康なドナー(HD)および回復後のドナー(RD)と比較して、新型コロナウイルス感染症患者ではB細胞とCD3 T細胞の頻度が有意に減少しました。CD4 T細胞と比較して、CD8 T細胞の選択的喪失が認められました。
  • 高次元フローサイトメトリー解析により、リンパ球の活性化と分化に差があることが明らかになりました。
  • 新型コロナウイルス感染症患者集団では、CD8 T細胞の活性化が引き起こされ、それに伴ってKI67陽性およびHLA陰性DR陽性CD38陽性非ナイーブCD8 T細胞が有意に増加しました。
  • また、新型コロナウイルス感染により多様なCD4 T細胞応答が起こりました。高次元tSNE解析により、新型コロナウイルス感染症患者において活性化された異なるCD4集団が同定されました。
  • また、サイトカイン濃度(例:CXCL10)も新型コロナウイルス感染症患者と他の集団との間で異なっていましたが、その他の項目には増加は認められませんでした。
  • 新型コロナウイルス感染症患者において他と異なるB細胞集団が認められ、これらのB細胞集団は、いくつかの細胞表面マーカーの発現の点で、表現型が健康なドナーおよび回復後のドナーと異なっていました。
  • ナイーブB細胞集団の頻度は新型コロナウイルス感染症患者とHD集団およびRD集団との間でほぼ変わりませんでしたが、クラススイッチメモリーB細胞集団(IgD陰性CD27陽性)および非クラススイッチメモリーB細胞集団(IgD陽性CD27陽性)では頻度が減少し、CD27陰性IgD陰性B細胞およびCD27陽性CD38陽性形質芽球では著しく増加しました。
  • また、形質芽球応答も新型コロナウイルス感染症患者の間で異なっていました。
  • 非ナイーブCD8 T細胞、非ナイーブCD4 T細胞、B細胞の免疫応答には、安定した疾患進行との時間的関連性が認められました。
  • コンピュータ解析により、疾患重症度の経過と関連する可能性のある、他と異なる免疫集団の存在が明らかになりました。
  • 頑強なCD4 T細胞活性化、cTFH細胞および増殖性エフェクター/疲弊CD8 T細胞・T-bet陽性形質芽球の減少または欠失は、より重度の疾患と相関していました。
  • 従来型のエフェクターCD8 T細胞応答、CD4 T細胞の活性化の低下、増殖性形質芽球・メモリーB細胞の減少は、頑強なT細胞・B細胞応答が誘導されなかった患者と相関していました。

 

Read the paper for further details.

Reference

Mathew D, Giles JR, Baxter AE, et al. Deep immune profiling of COVID-19 patients reveals distinct immunotypes with therapeutic implications. Science. 2020;369(6508):eabc8511. doi: 10.1126/science.abc8511

本製品は研究用です。診断や治療には使用できません。