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Overview
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シングルセルレベルで遺伝子とタンパク質発現を同時解析することで、細胞の挙動と機能に関するより深い洞察を得ることができます。シングルセル・マルチオミックス解析では、一度のワークフローで数千の細胞の転写物とタンパク質発現をシングルセルレベルで同時解析することができます。BDバイオサイエンスでは、シングルセル・マルチオミックス研究を促進およびサポートするために必要なマルチオミックス・ツールや関連試薬を取り揃えています。

 

 

シングルセル・マルチオミックス解析のためのBDバイオサイエンス・ツール

BD Rhapsody™ シングルセル解析システムはハイスループットなシングルセル・マルチオミックス解析を可能にします。QC機能を備えた、マイクロウェルベースの細胞単離システムから、BD Rhapsody™ 全トランスクリプトーム解析BD Rhapsody™ ターゲットmRNAパネルBD Rhapsody™ TCR / BCRプロファイリングやBD® AbSeqなどのRNA及びタンパク質アッセイやシングルセルデータ解析ツールまで、お客様のシングルセル研究を包括的にサポートします。BD Rhapsody™シングルセル解析システムに、蛍光活性化セルソーティングなどの細胞濃縮ステップを組み合わせることで、目的細胞に絞ったより深い解析が可能になります。BDシングルセル・マルチオミックス・アプリケーションは免疫学・免疫腫瘍学から代謝疾患の分子基盤の理解に至るまで、幅広い研究分野をカバーしています。研究者がBD Rhapsody™ マルチオミックス・ツールを使用することでそれぞれの研究分野の深い洞察が可能になります。

 
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Immuno-Oncology
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Immuno-Oncology Research

慢性リンパ性白血病の表現型探索

慢性リンパ性白血病 (CLL)は、成人によくみられる白血病であり、血液及び骨髄における機能不全の異常な進行性リンパ球の蓄積により特徴づけられます。最近のバルクRNAシーケンス解析では、CLLサンプル内の不均一性が報告されており、根底にある転写プロファイルを特徴づけるためには、シングルセルRNAシーケンスで個々の細胞のトランスクリプト発現解析をする必要があります。BD Rhapsody™ シングルセル解析システムを使用した、臨床CLLサンプルのシングルセル遺伝子/タンパク質・同時発現解析の一例をご紹介します。

 

Experimental Outline

計3人の健常ドナーと4人のCLLサンプルからの末梢血単核細胞(PBMC)を、BD® Single-Cell Multiplexing Kit、蛍光色素標識抗体、および33のBD® AbSeq抗体で同時に染色しました。次に、それぞれのサンプルからCD19+細胞を、BD FACSMelody™ セルソーターを使用して分取し、BD Rhapsody™ システムにロードする前にサンプルをプールしました。cDNA合成後、ターゲットBD Rhapsody™ Immune Response Panel (399遺伝子)を使用して、シーケンス用ライブラリーを調製し、BD Rhapsody™ 解析パイプラインとSeqGeq™v1.6ソフトウェアでデータを解析しました。

 
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BD Fluorochrome-labeled Antibodies Used for Sorting
Marker Fluorochrome
CD3 APC
CD14 APC
CD16 APC
CD19
PE
CD41a
APC
CD56
APC
CD235a APC
BD Fluorochrome-labeled Antibodies Used for Sorting
AbSeq Marker
CD4
CD24 CD80 CD184
CD5
CD27 CD81 CD275
CD7 CD33 CD86 CD279
CD8
CD34 CD90 CD294
CD9
CD38 CD103 IgG
CD10
CD40 CD117 IgD
CD11c
CD45 CD123  
CD19 CD45RA CD127  
CD20 CD69 CD133  
 

本研究で使用した蛍光色素標識抗体(左)とBD®AbSeq抗体(右)のリスト

 

 

健常・疾患サンプルにおけるマルチオミックス解析

上記のワークフローから得られたデータを解析するために、mRNA発現、表面タンパク質発現、または両方の組み合わせを使用して、4つのCLLサンプルと3つの健常ドナーサンプルに対してt-SNEで解析しました。上記のワークフローから得られたデータを解析するために、mRNA発現、表面タンパク質発現、または両方の組み合わせを使用して、4つのCLLサンプルと3つの健常ドナーサンプルに対してt-SNEで解析しました。  AbSeqデータに基づいたt-SNEプロットでは、RNA-Seqデータのみを使用した場合と比較して、異なるサンプル間でより明確なクラスターが形成されました。さらには、mRNAとAbSeqの両方のデータを組み合わせることで、様々なサンプルの解像度が大幅に向上しました。t-SNEプロットで、 4つのCLLサンプルは個別にクラスターを形成しているのに対し、健常サンプルでは、クラスターの重複がみられ、CLL患者の臨床経過が不均一である可能性があることを示唆しています。これらの結果は、シングルセルプロファイルの分析におけるマルチオミクス・アプローチが重要であることを示しています.

 
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AbSeqアッセイによって特定された主要なタンパク質マーカーの違い

CLLは、CD5 + Bリンパ球のクローン増殖と蓄積を特徴としています。 さらに、CLL患者の悪性B細胞ではより高いレベルのCD11cが発現することが知られています。BD® AbSeqアッセイで、健常ドナーと比較して、CLLサンプルにおけるCD11cおよびCD5のより高い発現が明らかになり、CLLの病因と相関しています。 一方、健常ドナーと比較して、CLLサンプルではCD10およびCD20の発現が低いことが観察されました。これは、公表されている文献と一致しています。

 
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健常サンプルとCLLサンプル間で差次的に発現するマーカー解析

健常サンプルとCLLサンプルの明確なクラスタリングに関わるマーカーの深い洞察を得るために、シングルセルのmRNAとAbSeqデータを使用して差次的発現解析を行いました。この解析により、健常サンプル(グループ1)と比較してCLLサンプルで減少したマーカーが特定されました。 すべてのCLLサンプルで差次的に増加した遺伝子またはタンパク質はグループ2(すべてのCLL)に、一部のCLLサンプルで増加したものをグループ3に示されています。 CLL患者で異常に発現したマーカーであるCD5は、他のサンプルと比較してCLL03およびCLL04で高いことが示されています。また、CD11cなど、CLL04(グループ4)に特に関連するマーカーのサブセットも発見されました。 興味深いことに、すべての細胞が同じレベルでCD11cを産生するわけではなく、これはCLLの腫瘍内不均一性を示唆しています。

 
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Summary

本研究では、約500の標的遺伝子と33のBD®AbSeq抗体を使用して、3つの健常サンプルと4つのCLLサンプルの違いを調査しました。 mRNAとAbSeqの両方のデータを組み合わせることで、CLLと健常サンプルが別個のグループにクラスター化されました。健常サンプルと比較してCLLサンプルで差次的に発現するユニークなマーカーが特定されました。CLLサンプル全体、特にCLL04サンプルで有意な不均一性が観察されました。 全体として、CLLサンプルのシングルセルマル・チオミクス解析では、それらの特徴的なマーカーについての新しい洞察を明らかにしました。

 

CLLのようながんに対するこのような洞察により、より良い治療法の開発に役立つことが期待されます。詳細は、CLL heterogeneity datasheetをダウンロード

T Cell Research
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Immunology research—T cell biology

 

BDは、何十年にもわたりシングルセル・マルチオミックス研究を含め、免疫学研究を推進するための最先端ソリューション・ツールの開発をしてきました。ここでは、BD Rhapsody™ シングルセル解析システムを使用した免疫学研究の一例をご紹介します。.

T cell exhaustion study

疲弊T細胞の詳細特性評価

T細胞のような免疫細胞において、活性化と疲弊化のメカニズムを理解することは、免疫療法の開発には今や必要不可欠です。

CAR-T細胞療法のような、急速に発展している免疫療法分野では、特に分子メカニズムを解き明かすことが重要になってきます。CAR-T細胞の製造における重要なステップは、遺伝子改変された十分なT細胞を増殖させることです。治療用に十分な細胞を生産するためには、細胞を慢性的に刺激する必要があります。これにより、T細胞の疲弊が誘発され治療効果を低下させるリスクが高まります。CAR-T細胞の収量、機能、持続性を最適化するためにT細胞増殖用のプロコールが開発されており、T細胞の形質に対するin vitro操作の影響を調べることはとても重要になってきます。本研究では、T細胞活性化実験で使用されているモデルを使用して、シングルセル・マルチオミックス解析を実施することにより、T細胞の形質に対するin vtro操作の影響を調べました。

 

Experimental design 

PBMCより磁気的に濃縮されたT細胞は、IL-2およびCD3/CD28 Dynabeads™ 磁気ビーズ存在下で、3日間刺激しました。Dynabeads™ 磁気ビーズを取り除き、IL-2の存在下でさらに11日間細胞培養することで、一過性の刺激を行いました。新鮮なT細胞、3日、7日、14日間刺激した細胞(慢性的刺激)、3日刺激して11日休ませた細胞(1次的刺激)、合計5つのサンプルを採取し凍結しました。

 
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各タイムラインから2つのアリコートを採取しました。それぞれのサンプルの1つのアリコートは解凍し、39 BD® AbSeq 抗体 と BD® Single-Cell Multiplexing 抗体で染色しました。サンプルをプールし、2つのBD Rhapsody™ Cartridges (~3,000 細胞/サンプル)にロードしました。BD Rhapsody™ T-Cell Targeted Panelを使用してサンプルあたりのmRNA発現レベルを評価しました。凍結細胞の2つめのアリコートを12色フローサイトメトリーパネルで分析し BD LSRFortessa™ X-20 Cell Analyzerで分析しました

 

 

 

 

 

 
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BD® AbSeq 抗体 と flow 抗体の使用

The BD® AbSeq Panel を使用することで、T細胞の活性化、阻害/疲弊、分化、また走化性に関与する39のタンパク質を特定できます。重複する特異性を持つ12色のフローサイトメトリーパネルも、AbSeqアッセイとフローサイトメトリーの結果を評価するようにデザインされました。 ScRNA-Seqパネルには、免疫応答に関与する400遺伝子が含まれています。ここに示されている、全てのデータはCD8+ T 細胞より得られました。

 

39-Plex AbSeq Panel
CD4 CD278 (ICOS) CD103 CD94
CD8 CD178 (FAS-L) CD30 CD95
CD279 (PD-1) CD183 (CXCR3) CD38 CD98
CD223 (LAG-3) CD185 (CXCR5) CD39 CD2
CD366 (TIM-3) CD194 (CCR4) CD44 TCRab
CD272 (BTLA) CD196 (CCR6) CD45RA CD154
CD357 (GITR)/td> CD137 (4-1BB) CD49a CD7
CD226 (DNAM-1) CD134 (OX40) CD54 CD2
CD152 (CTLA-4) CD27 CD62L CD25
CD270 (HVEM) CD28 CD69  
12-color Flow Cytometry Panel
Marker Fluorochrome
CD4
BUV805
CD8
BUV395
CD279 (PD-1)
PE-Cy7
CD152 (CTLA-4) 
PE
CD223 (LAG-3) BV480
CD366 (TIM-3)
BV711
CD39
BUV737
CD103
APC
CD45RA APC-H7
CD62L FITC
CD95 BV786
CD357 (GITR) BV421

本研究に使用したBD® AbSeq抗体(左)とと蛍光色素標識抗体(右)のリスト。

T細胞解析

個別のクラスターはサンプルごとに分離され、タンパク質のみ、mRNAのみ、また両方の組み合わせに基づくクラスタリングの解像度はすべて同等です。

一過性に刺激された細胞クラスター(14日目)は、新鮮なT細胞と慢性的に刺激された細胞とくらべ明確なクラスター形成が観察され、それぞれに特徴があることが示唆されました。これは、一過性に刺激された細胞が新鮮細胞と同様の表現型また機能性を示すという以前の報告とは対照的な結果となりました。慢性的に刺激された細胞(3, 7, 14日目)は新鮮な細胞とは異なるクラスターを形成しました。これは、それぞれにおいて固有の特性があることを示しています。

 
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シングルセルレベルで表面タンパク質と遺伝子発現の相関分析

異なる細胞集団のタンパク質とmRNAの特性を解析することで様々な洞察が明らかになりました。CD7のようなマーカが、タンパクとmRNA発現が様々なタイムポイントで強い相関を示しました. CD103(ITGAE)mRNAは活性化の3日目に高発現し、タンパク質の発現は7日目に増加しました。慢性的に刺激された細胞では、CD38 mRNAは3日目に高発現し、時間とともに増加傾向を示しましたが、タンパク質の発現は14日目に増加しました。一過性に刺激された細胞では、mRNAの発現は維持されませんでしたが、CD38タンパク質は14日目に発現しました。

 
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一致したBD®AbSeqマーカーデータとフローサイトメトリーデータ

CD8 T細胞発現マーカーの割合と、フローサイトメトリーとAbSeqアッセイの両方で検出された細胞表面マーカーのそれぞれのタイムポイントによって示されるタンパク質発現動態は一貫していることが示されました。これらのデータは、AbSeqアッセイとフローサイトメトリーデータの一致とタンパク質発現を研究するための有用性を強く示しています。

 
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Summary

AbSeqを使用することで、簡単なワークフローで多くのタンパク質(本研究では39)の広範囲な解析が可能になります。AbSeqテクノロジーにより、幅広い頻度(希少なものから豊富なものまで)で存在する細胞サブセットの多様な発現を示す(低から高)様々なクラスの抗原(Primary, Secondary, tertiary)の解析が可能になりました。さらには、BD Rhapsody™シングルセル解析システム試薬を使用することで、この研究では、様々な刺激の条件下で、遺伝子とタンパク質両方の発現変化が経時的に同時に検出することができました。タンパク質とmRNAの発現を同時に解析することで、mRNAとタンパク質の発現の相関関係を評価し、潜在的は調節メカニズムを決定することができ、より洗練された、深い細胞の特性評価につながります。詳細は、T cell exhaustion datasheetをダウンロード

Regulatory T cell study

シングルセル・マルチオミックス解析による制御性T細胞の包括的な特性評価

制御性T細胞 (Tregs)は免疫恒常性を維持する上で重要な役割を果たしており、それらの変化は腫瘍の進行や自己免疫疾患の発症など多くの影響を与える可能性があります。制御性T細胞は機能的に均質な集団ではなく、CD45RAおよびHLA-DRの発現に基づいて、それぞれナイーブまたは活性化T細胞としてサブグループに分けられます。本研究では、BD Rhapsody™ Human Immune Response Panel と BD® AbSeq 抗体を使用して、Tregサブセットをさらに解析し、推定される細胞分化の軌跡を特定しました。刺激性/抑制性受容体とサイトカイン/ケモカイン受容体を含む22のタンパク質と399の転写物をシングルセルレベルで解析しました。

 

Experimental design 

健常なドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)は細胞分取用の蛍光色素標識抗体およびシーケンスでのタンパク質検出用のBD®AbSeq抗体で共染色されました。サンプルはCD4+CD25+CD127low/−  Tregsで分取され、5,000個のソートされたTregsがBD Rhapsody™ シングルセル解析システムにロードされ、細胞を単離しました。サンプルを回収後、BD® AbSeqおよびmRNA(BD Rhapsody™ Human Immune Response Panel)シーケンス用ライブラリーを調製しました。シーケンス結果は、BD Rhapsody™ 解析パイプラインとSeqGeq™ ソフトウェアで分析されました.

 
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BD®AbSeq抗体を用いたTreg細胞の表現型の特徴評価

本研究では、最初に、他のアッセイ方法で、以前に定義された主要なTregサブセットにおけるBD®AbSeq抗体の識別能を評価しました。この結果は、BD® AbSeq抗体を使用することで、ナイーブTregと活性化Tregをそれぞれ定義するCD45RAやHLA-DRなどの一連で発現する抗原の明確な分離が可能であることが示されました。選択したマーカーの発現は、CD45RA + HLA-DR-ナイーブ細胞、CD45RA-HLA-DR +活性化細胞、およびCD45RA-HLA-DR-細胞内で測定されました。以前の報告と一致して、CD31は、最近の胸腺移出(RTE)を表すCD45RA + HLA-DR-ナイーブTregの小さなサブセットでのみ検出されました。一方、CD95はCD45RA-HLA-DR-およびCD45RA-HLA-DR +活性化細胞の両方で発現し、活性化Treg内のCD95 +アポトーシス感受性細胞を同定した以前の報告と一致しています。ケモカイン受容体CD185 (CXCR5)と抑制受容体CD279 (PD-1)についても、明確な発現パターンが示されました。

 
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Monocle解析によるTreg分化解析

教師なし高次元データ解析を使用して、Tregサブセットの識別能を上げました。Monocleアルゴリズムで、シングルセル細胞の軌道分析を行い、分化プロセルの遷移状態を定義するために使用しました。22のタンパク質と399のmRNAターゲットの発現に基づいて、8つの異なる状態が特定され、Tregの異なる分化状態が示唆されました。下の図(B)のシングルセルヒートマップは、8つの状態で差次的に発現する選択されたタンパク質と遺伝子を示しています。各状態に属する細胞は、CD45RAの進行性の喪失とHLA-DRの高発現に基づいて、左から右に配置され、ナイーブ細胞から活性化細胞への進行を表しています。CD45RA発現のレベルの違いに加えて、CD31はRTEの特性と一致して、状態7の細胞でのみ発現するため、これら3つの状態をさらに区別することができます。一方、状態5でのCD95の排他的発現とCD45RAの同時低発現は、ナイーブ細胞からアポトーシス感受性の活性化細胞への移行を示唆している可能性があります。

 
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Summary

本研究では、既知の表面マーカー特性に基づき、Tregサブセットを特定するためにBD Rhapsody™ プラットフォームとそのマルチオミックツール(BD®AbSeq抗体など)の感度と特異性を示しました。シングルセル・マルチオミックスと高次元データ解析を組み合わせることにより、特徴的なたんぱく質及び遺伝子発現の特性によって定義されるTregのサブセット解像度が高くなり、Tregの特徴的な分化段階を評価できる可能性があることが示唆されました。

 

詳細は、regulatory T cells datasheetをダウンロード

Innate Immune System
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Immunology research—innate immune system

 

Innate lymphoid cells (ILC) 

シングルセル・マルチオミックス解析を使用したヒト循環自然リンパ球の不均一性の解明

自然リンパ球 (ILC)は、再構成された抗原受容体を発現せず、炎症、感染、癌、代謝障害、およびアレルギーにおいて重要な機能を持つ、最近同定されたリンパ球系に属する自然免疫細胞です。この細胞群は、細胞傷害性のナチュラルキラー(NK) 細胞や、非細胞傷害性ILCsを含む不均一な集団であることが分かっています。非細胞傷害性ILCの3つの主要なグループは、サイトカイン生産と転写因子の異なるパターンに基づいて、粘膜組織と非粘膜組織で特徴づけられています。しかしながら、シングルセルRNAシーケンス (ScRNA-Seq)またはハイパラメーター・マスサイトメトリーを使用した最近の研究報告では、ILCには3つ以上のグループが存在することが示されました。

したがって、ILCの不均一性を深く理解することは、それがどのように疾患の病因に影響するか特定し、ILCを調べることで疾患の予防または治療に役立つか評価するために必要です。シングルセル・マルチオミックス解析により、同じ細胞から表現型と転写物のデータの統合を可能にし、ILCの不均一性解析が可能になりました。

Experimental outline

末梢血白血球は、HetaSep™(STEMCELL Technologies)で分離し、細胞分取用の12の蛍光色素標識抗体パネルでラベル化しました。さらには、次世代シーケンサーでタンパク質を検出するため、42のBD® AbSeq 抗体で同時に細胞を染色しました。BD Horizon Brilliant Violet™510(BV510)CD19、CD14、TCRγδ、TCRαβ、CD123、CD1a、BDCA2、FCεR1α抗体の色素標識カクテルを「ダンプチャネル」として使用し、系統細胞を除外しました。T細胞とNK細胞の明確な分離と排除を確実にするために、CD3およびCD56抗体をさらに分取用のパネルに組み込みました。ILCは Lineage-CD45+CD127+細胞として定義され、BD FACSAria™ Fusion Cell Sorterを使用して分取され、BD Rhapsody™シングルセル解析システムにロードし細胞を単離しました。サンプル回収後、シングルセルBD® AbSeq とmRNA (BD Rhapsody™ Human Immune Response Panel)用のライブラリーをシーケンスするために調製しました。BD Rhapsody™解析パイプラインとSeqGeq™ソフトウェアを使用してデータを分析しました。次に、シングルセル解析で得られた情報を使用して、ハイパラメーター・フローサイトメトリー用のパネルの設計をしました。マルチオミックス解析から得られた情報は、BD FACSymphony™ A5 Cell Analyzerの21色フローサイトメトリーパネルを使用して、4人の健康ドナーからの末梢血ILCを分析しました。

 
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Marker Clone Fluorochrome

CD19

CD14

TCR

TCR

CD1a

CD123

BDCA2

FC

SJ25-C1

M

11F2

IP26

HI149

9F5

V24-785

AER-37

BV510
CD45 2D1 FITC
CD3 SK7 APC-H7
CD56 B159 PE-C
CD127 HIL-7R-M21 BV421
lineage-CD45 + CD3-CD56-CD127 +全ILCの分取に使用された蛍光色素抗体のリスト
 
                            BD® AbSeq Panel
Marker Clone Marker Clone
CD2 RPA-2.10 CD90 5E10
CD3 SK7 CD94 HP-3D9
CD4 SK3 CD98 UM7F8
CD5 UCHT2 CD103 BER-ACT8
CD7 M-T701 CD117 YB5.B8
CD8 RPA-T8 CD125 (CTLA-4) BNI3
CD11b M1/70 CD161 DX12
CD11c B-LY6 CD183 (CXCR3)  1C6/CXCR3
CD14 MϕP9 CD184 (CXCR4) 12G5
CD16 3G8 CD196 (CCR6) 1149
CD19 SJ25C1 CD223 (LAG-3)  T47-530
CD25 2A3 CD226 (DNAM-1) DX11
CD27 M-T271 CD274 (PD-L1) MIHI
CD28 CD28.2 CD275 (B7-H2 2D3/B7
CD34 581 CD278 (ICOS) DX29
CD45RA HI100 CD279 (PD-1) EH12.1
CD49a SR84 CD294 (CRTH2) BM16
CD49d 9F10 CD314 (NKG2D) 1D11
CD56 NCAM16.2 CD335 (NKp46) 9E2/NKP46
CD62L DREG-56 CD336 (NKp44) p44-8
CD69 FN50 CD366 (TIM-3) 7D3
分取された全ILCのシングルセル・マルチオミック解析に使用されたBD® AbSeq抗体リスト。

 

 

 

マルチオミックス解析によって明らかにされた異なるILCサブグループ

データ解析では、CD117- CD294- ILC1、CD117 +/- CD294 + ILC2およびCD117 + CD294-ILC前駆体/ ILC3(ILCP / ILC3)として従来定義されている循環ILCの3つの主要なグループを手動でゲーティングしました。シングルセルAbSeqおよびmRNAデータを使用して、3つのILCグループ間で差次的発現解析を行い、各グループに固有のタンパク質及びmRNA発現の特徴を特定しました。この解析により、ILCグループを定義する主要な転写因子の発現パターンが明らかになりました。例えば、T-betをコードする遺伝子(TBX21)は、ILC1細胞のサブセットでのみ発現していましたが、GATA3はILC2細胞で最高レベルで発現していました。最近の報告のように、RORγδをコードするRORCは、ILC3表現型を示す循環ILC前駆細胞(CD117 + CD294-ILCP / ILC 3細胞)によって部分的に発現されました。

 
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ILC1細胞集団の不均一性に関する洞察

シングルセルヒートマップでは、全ての細胞で表示されたほとんど全てのマーカーが均一に発現していなかったことから、各ILCグループ内の不均一性も明らかになりました。したがって、これらのデータは、ILCの各グループ内に追加のサブセットが存在することを示唆しています。例えば、大部分のCD4はILC1細胞に発現していました。この結果は、以前の報告と一致していて、ILC2または、ILCP/ILC3細胞ではなく、ILC1において、CD4+ および CD8+ 細胞のサブセットが二変量プロット分析によって確認されました。   

 
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ILC1のシングルセル不均一性

ILC1細胞の不均一性をさらに調べるため、CD4 + CD8-、CD4-CD8 +、およびCD4-CD8-ILC1集団の3つのサブセット間で遺伝子およびタンパク質の発現解析を行いました。図B(上)は、各サブセットに関連付けられた代表的なタンパク質と遺伝子の特徴を表示するシングルセルのヒートマップを示し、ILC1サブセットの高い不均一性と複雑さを示しています。これらのデータは、いかにシングルセル・マルチオミックス・アプローチが、多くのタンパク質および遺伝子のスクリーニングや不均一なサンプル内の特徴的な細胞サブセット定義/識別するためのマーカーを発見するためは有用であるかを示しています。テストした42のAbSeq抗体のうち、この研究では、ILC1の3つのサブセット間で時差的に発現する13の表面マーカーが特定されました。また、表面タンパク質CD63をコードする1つの差次的に発現する遺伝子(CD63)が同定されました。さらに、ILCの複数サンプルを迅速にプロファイリングするための、21色のフローサイトメトリーパネルが、マルチオミックスデータに基づいてデザインされました(データは示されておりません)。

Summary

本研究では、循環するヒトILCの深い特性評価のための完全な実験ワークフローを確立しました。42のタンパク質と399の遺伝子の発現を同時に解析するためILCを分取しました。シングルセル・マルチオミックス解析により、ILCの3つの主要なグループを表す複雑な免疫表現型及び分子特性が明らかになりました。ILC1細胞内の不均一性が示され、異なるILC1細胞集団を定義するマーカーの発見につながりました。シングルセル・マルチオミックス・スクリーニングによって得られた生物学的情報は、複数のドナーからのILC1細胞のさらなる詳細な特徴解析に使用できるハイパラメーター・フローサイトメトリーパネルをデザインする際に有用でした。

Metabolic Disease Research
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Metabolic disease research

 

シングルセル・マルチオミックス解析を使用した肥満マウスモデルにおける免疫細胞特性評価

肥満は、2型糖尿病、心血管疾患や癌などの様々な病気の発症の主要な危険因子として知られています。通常な肥満から病状への移行は、局所および全身性炎症の増加と関係があり、免疫細胞の数と機能変化によっても特徴づけられます。マクロファージは脂肪細胞の炎症の重要な因子であり、T細胞集団の変化も動物モデルの肥満発症に関与していることがわかっています。シングルセルレベルでmRNAとタンパク質の発現変化を調べることで、高脂肪食(HFD)がどのように炎症を誘発し、最終的に肥満関連障害を引き起こすかについて、より深い洞察を得ることができます。本研究では、BDバイオサイエンスのフローサイトメトリーおよびシングルセル解析ツールを使用して、肥満マウスモデルにおいて免疫細胞の研究例をご紹介します。

Experimental outline

コントロール飼料または高脂肪食飼料を摂取させたマウスの複数の組織由来の約20,000個のシングルセルで30のタンパク質と399の標的mRNAを解析しました。細胞分化および活性化マーカーの解析により、HFDに関連する変化を調べました。HFDおよびコントロール食餌マウスはJackson laboratoriesから入手しました。

7週齢のマウスをコントロール飼料またはHFDをそれぞれ17週間摂取させました。 シングルセル懸濁液は、骨髄、胸腺、脾臓、精巣上体脂肪組織から調製されました。採取した組織を解離後、図に示されている8つのサンプルは、30のBD® AbSeq Mouse Antibodies とBD® Mouse Immune Single-Cell Multiplexing Kitからの12のユニークなDNAバーコード抗体の1つで染色されました。BD Pharmingen™ FITCラット抗マウスCD45抗体で脂肪組織細胞を染色し、CD45 +細胞はBD FACSAria™ Fusion Cell Sorterで分取されました。8つのサンプルをプールし、BD Rhapsody™ シングルセル解析システムにロードしました。 サンプル回収後、BD® AbSeq、サンプルタグ、およびmRNA(BD Rhapsody™ Mouse Immune Response Panel)ライブラリーをシーケンス用に調製しました。

シーケンス結果は、BD Rhapsody™ 解析パイプラインとSeqGeq™ ソフトウェアを使用して分析しました。

 
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偏りのない細胞クラスタリングは、異なるサンプル間で複数の細胞表面型を識別します

t-SNEでは、データ視覚化のため、実験から得られたマルチオミックデータと、細胞集団の検出のためのバイアスのないクラスタリング・アルゴリズムPhenoGraph (SeqGeq™ソフトウェアプラグイン)を使用しました。PhenoGraphは、4つの異なる組織タイプにわたって12個の細胞クラスターを識別しました。 12のクラスターのうち、4つは、コントロール・クラスター1、5、7、および12と比較して、HFDマウスの脂肪組織における細胞密度と分布の違いを示しました。            

 
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コントロールおよびHFDマウスの脂肪組織におけるCD8 + T細胞のシングルセル・タンパク質およびターゲットmRNA-Seq分析

クラスター12の特性は、これらの細胞の表面でCD8bの高発現レベルを明らかにし、このクラスターが主にCD8 + T細胞で構成されていることを示唆しています。特に、HFDマウスのクラスター12は、コントロールよりも高濃度のCD8 + T細胞を示しました。このクラスターのmRNAおよびタンパク質発現の差異分析では、疲弊している細胞の推定マーカーであるPdcd1(CD279、PD-1 mRNA)、Lag3、およびTigitの発現の上昇が示されました(下のパネルB)。

 
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HFD脂肪組織からのCD8 + T細胞のMonocle解析は、これらの細胞の疲弊化を示唆しています

Monocleを使用した脂肪組織のCD8 + T細胞の特異的分析により、5つの分化状態が識別されました。コントロールマウスのCD8 + T細胞は状態1と2に属していましたが、HFDマウスの細胞はさらに状態3、4、5に向かう軌跡をたどりました。HFDマウスの状態2、3、4、5はCD279(PD-1)タンパク質やmRNA(Pdcd1)などのマーカーとTigitなどの疲弊マーカーの発現が上昇しました。

 
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Summary

Tこれらの結果は、BD® AbSeq抗体とBD Rhapsody™ Mouse Immune Response Panelを使用してBD Rhapsody™ シングルセル解析システムによるマルチオミックス・アプローチで、肥満などの代謝障害に関する独自の洞察が得られたことを示しています。この包括的なシングルセル解析プラットフォームと強力なバイオインフォマティクス・ツールを組み合わせることで、CD8 + T細胞の疲弊の兆候や、HFD誘発性炎症に関するその他の新しい洞察など、独特の病態免疫細胞プロファイルを解明することができました。

 

詳細は、obesity-induced inflammation study datasheetをダウンロード

研究用です。治療、診断には利用できません。

Dynabeads is a trademark of Thermo Fisher Scientific. HetaSep is a trademark of STEMCELL Technologies Canada Inc.