Apoptosis

生と死, そして細胞増殖

細胞増殖とアポトーシスの均衡は、分化および正常組織のホメオスタシスを維持する上で非常に重要です。細胞増殖とは、細胞の成長と分裂による細胞数の増加であり、一連の「期」に分けられる細胞周期によって制御されています。また、アポトーシス、あるいはプログラム細胞死は、制御された自己破壊を引き起こします。BD バイオサイエンス は、 最先端テクノロジーと製品を統合した包括的アプローチにより、アポトーシス、細胞周期、細胞増殖の研究を支援しています。

Cell Cycle Proliferation Cell Death Detection Key Regulators

細胞周期と細胞増殖

免疫、炎症、造血、腫瘍形成など生物学的反応に関わる基本的な細胞メカニズムを、研究者がより深く理解するのをサポートするため、BD バイオサイエンスは、抗体、キット、および細胞増殖反応測定のためのシステムを含む、幅広いツールを提供しています。

真核細胞における細胞成長、複製、および分裂は、細胞周期と呼ばれる高度にコントロールされた一連の事象に従って起こります。 様々な手法を使用することで、細胞周期の状態や個々の細胞の組織局在を 、素早くかつ正確に判定できます。 一例として、 適応免疫においては、特異的Tリンパ球およびBリンパ球は、外来抗原の刺激に反応してクローン性増殖(分裂、増殖、および分化)を経ますが、下記のような解析が可能です。


細胞周期の各段階

細胞周期

細胞周期には2つの主要な期間があります。有糸分裂事象間の間期、そして、母細胞が2つの同一の遺伝子をもつ娘細胞に分裂する分裂期です。間期には3つの異なる連続的な段階があります。G1と呼ばれる最初の段階では、細胞は自身の環境を「モニター」し、必要なシグナルを受け取ると、細胞は成長を誘発させるためにRNAやタンパクを合成します。条件が整うと、細胞は細胞周期のS期に入り、DNA合成に「コミット」し、染色体DNAを複製します。最後にG2期で、細胞は成長を続け、有糸分裂に備えます。

細胞のDNA含量解析

細胞周期研究では主にDNA含量を解析します。 解析するための試薬は、例えば、ヨウ化プロピジウム (PI)や7-アミノアクチノマイシンD (7-AAD)等のDNA染色剤があります。DNA染色剤の他、より精確なDNA測定を可能にするために、タンパクやRNAを分解する試薬を使用することもあります。(BD Cycletest Plus reagent kit) その後、倍数性の評価や、異常DNAを有する系統の同定、DNAインデックス(DI)や種属系統の細胞周期の分布評価のため、フローサイトメトリーを使ってサンプルを分析します。 細胞が細胞周期の段階を進んでいくに従って、ヒストンH3 Ser28等のタンパクは、修飾を受けたり、発現量が変化したりします。DNAの複製を促進させるため、ヒストンは修飾され、複製機構が入れるようにクロマチンを開きます。 細胞周期研究をサポートするため、BD バイオサイエンスは、イメージングやフローサイトメトリーに適したこれらのタンパクに対する抗体を揃えています。

CD4+マウス脾細胞を抗CD3/CD28抗体と培養した例

取り込まれたBrdUおよび総DNA量 (7-AAD)の染色による細胞周期解析

測定 試薬 メカニズム 手法 サンプルの種類
DNA ヨウ化プロピジウム (PI)、7-アミノアクチノマイシンD (7-AAD) DNA2本鎖との相互作用 フローサイトメトリー 固定、膜透過、無傷細胞の生/死識別
細胞染色剤 BD Horizon™ violet proliferation dye 450 (VPD450) 生細胞に浸透後、細胞内の非特異的エステラーセで加水分解され蛍光物質を産生 フローサイトメトリー 増殖している生細胞
新規合成DNA BrdUとBrdUに対する抗体 ブロモデオキシウリジンが分割DNA中のチミンジン(T)と置き換わる。その後、BrdUに対する抗体で検出。 フローサイトメトリー、細胞イメージング、免疫組織化学 固定・膜透過細胞、種々の処理済組織(細胞イメージング、免疫組織化学のみ)
タンパク量 Ki67、PCNAに対する抗体 増殖の結果レベル上昇 フローサイトメトリー、バイオイメージング、免疫組織化学、ウェスタンブロット 固定細胞、組織、および抽出物
タンパク量 サイクリン、網膜芽細胞腫(Rb)、その他の細胞周期マーカーに対する抗体 細胞周期の段階によって増減する フローサイトメトリー、バイオイメージング、免疫組織化学、ウェスタンブロット 固定細胞、組織、および抽出物
タンパク修飾 リン酸化ヒストンH3、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)に対する抗体 細胞増殖または細胞周期の変化によりタンパクがリン酸化される フローサイトメトリー、バイオイメージング、免疫組織化学、ウェスタンブロット  
BD™ CBA (定量的検出用) 固定細胞、組織、および抽出物      

細胞分裂解析ための新しいツール

細胞増殖は、サイトカインを始めとした多くの刺激に反応して起こり得ます。BDは、研究者の細胞増殖研究をサポートする新製品を提供しています。

例えば、バイオレットレーザーで細胞増殖を検出するViolet Proliferation Dye 450は、マルチカラー解析を容易にし限りあるサンプルからより多くのデータを得ることが可能になります。

VPD450は非蛍光性のエステル化された染色剤です。エステル基により、染色剤は細胞内へ入ります。染色剤が細胞内に入ると、エステラーゼによる切断でエステル基は取り除かれ、染色剤は蛍光産物に変化し、細胞内に閉じ込められます。細胞複製が起こるたびに細胞あたりの染色剤の量が減少し、特徴的なパターンとなります。

BrdUによる細胞増殖解析

新規DNA合成の測定には、DNA前駆物質チミジンのアナログである、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を用います。

細胞周期のS期(DNA合成)の間、BrdUは新しく合成されたDNAに取り込まれ、抗BrdU特異的抗体によって容易に検出することが出来ます。BrdU検出用に開発されたBDの抗体およびキットは、細胞内フローサイトメトリー用と免疫組織化学用の両方を取り揃えています。

DNA増加に加え、ある種のタンパクのレベルも細胞増殖によって上昇します。例えば、Ki67は分裂中の細胞の核で発現される抗原です。しかし、細胞周期のG0期の間は検出されません。さらに信頼性を増すために、Ki67を、BrdUやVPD450等の他の増殖マーカーと組み合わせることも可能です。これらのマーカーを細胞表面抗原や他のタイプのマーカーと組み合わせて、さらに細胞のサブセットやその情報伝達経路に関する知見を得ることも可能です。

VPD450を用いて測定したIL-2産生と細胞増殖の相関関係

アフィディコリン(DNAポリメラーゼ阻害剤)で処理したHeLa細胞のBrdU染色による細胞周期解析

組織におけるホメオスタシスの重要性

傷害を受けたり、必要なくなった細胞は、胚発生や組織のホメオスタシス維持において起こる正常な生理的プロセスであるアポトーシスまたはプログラム細胞死を起こします。

アポトーシスは、細胞再生あるいは異常な細胞成長をコントロールするために、細胞に自己破壊のシグナルを送る組織化されたプロセスです。壊死は組織が傷害を受けた結果起こり、傷害を受けた細胞とその周囲の細胞の両方を失うのに対して、アポトーシスは、傷害を受けた細胞の秩序ある死として制御しています。

アポトーシスのプロセスは、ある種の形態学的特徴を有します。それらは、細胞膜の変化(膜対称性の喪失、膜接着の喪失など)、細胞質と核の凝縮、タンパクの切断、およびDNAのヌクレオソーム間切断などを含みます。プロセスの最終段階で、死につつある細胞は「アポトーシス小体」へと断片化した状態になり、その結果周囲の細胞に有意な炎症性傷害を及ぼすことなく、食細胞によって除去されます。

しかし、ある種の細胞はアポトーシスに特有の特徴を示しません。この場合、細胞死のメカニズムを確認するには、アポトーシスの複数の側面を解析します。

この多様な研究をサポートするために、BD バイオサイエンスは、アポトーシスの各段階を解析するツールおよび技術を提供いたします。フローサイトメトリー、バイオイメージング、顕微鏡(生細胞および固定細胞の分析)から、ELISA、IHC、ウェスタンブロット、蛍光分光分析に至るまで、多彩な方法を提供いたします。

Apoptosis Analysis Cell Death Annexin VPE - Image

Annexin V-アポトーシスシグナル伝達の主要タンパク

細胞膜の変化は、生細胞で検出されるアポトーシスプロセスの最初の特徴の1つです。通常は細胞膜の細胞質側に位置するフォスファチジルセリン(PS)の存在によって検出することが出来ます。アポトーシスの間、PSは細胞膜の外葉に移動し、カルシウム存在下、蛍光色素でラベルしたAnnexin Vに結合することにより、フローサイトメトリーや細胞イメージングによって検出することができます。

細胞膜が損傷すると細胞内Annexin Vも露出されるので、死細胞を除外するため、アポトーシスを起こした細胞と既に死んでいる細胞を区別する、7-AAD等の細胞膜不透過性染色剤が一般的に用いられます。Annexin Vで染まった細胞集団は、アポトーシスを起こした細胞集団を表しています。

Annexin V -V450によるアポトーシス、壊死、および細胞死のモニター

アポトーシス研究を合理的に行うためのツール

アポトーシスは、ある種のサイトカイン、タンパク間相互作用、および化学物質等で誘引されます。アポトーシスが開始されると、ミトコンドリアの膜電位変化が起こりますが、これは、BD™ MitoScreen (JC-1) フローサイトメトリーキットで測定が可能です。

ミトコンドリアの膜電位の上昇により、ミトコンドリア膜の透過性が高まり、Cytochrome CやPro-caspase等の可溶性タンパク質の放出を引き起こします。

Caspaseは、アポトーシスの最初の段階で、アスパラギン酸残基の位置で切断を受けて活性化する、一連のプロテアーゼです。活性型Caspaseはその後、Poly-ADP ribose polymerase(PARP) や他のCaspase等を含む多くのタンパクを切断することが出来ます。

DNAの断片化は、アポトーシスの最後段階の1つで、アポトーシス過程におけるエンドヌクレアーゼの活性化に起因しています。アガロースゲル電気泳動や末端標識等によって、DNA断片を単離・分離することを含むDNA断片化の研究のため、いくつかの確立された方法があります。

DNA断片化の測定では、BD™ APO-BrdU キットで使用されている末端標識法、あるいはterminal deoxynucleotidyl transferase (TdT) nick end labeling (TUNEL法)を使います. このアッセイでは、TdTが、二本鎖および一本鎖DNAの3’ヒドロキシル(OH)末端へのbromolated deoxyuridine triphosphate(Br-dUTP)の鋳型非依存的付加を触媒します。二本鎖および一本鎖DNAへBr-dUTPが取り込まれた末端部位は、標識した抗BrdUで細胞を染色することによって、フローサイトメトリーで特定します。対照的にBrdU増殖アッセイは、新たに合成されたDNAや、DNA鎖切断部位にBrdUを取り込ませます。

メカニズム アッセイ 主な特徴
細胞膜変化
(ホスファチジルセリンの露出)
Annexin 結合アッセイ
  • 標識を施した単品
  • Annexin V キット
  • 早期アポトーシスマーカーの検出
  • 迅速且つ簡単
  • フローサイトメトリーまたは免疫蛍光用
ミトコンドリアの変化 BD MitoScreen キット
  • 迅速且つ簡単、単一細胞で測定
  • フローサイトメトリーまたは免疫蛍光用
Caspaseの活性化 Caspase Activity Assay キット及び試薬
  • 迅速且つ簡単
  • 蛍光分光分析を使用
  Active Caspase-3 免疫測定 ELISA, フローサイトメトリーまたはウェスタンブロット
DNAの断片化
  • APO-BrdU TUNEL Assay
  • APO-DIRECT TUNEL Assay
  • 接着細胞で使用可能
  • フローサイトメトリーで単一細胞レベルでの解析可能
  • 細胞周期分析と組み合わせ可能

切断型Caspases及びPARPの測定

Caspasesは、アポトーシスの重要なイニシエーターです。 アポトーシスの最も早期に、かつ最も一貫して見られる特徴の1つは、細胞質プロテアーゼCaspaseの活性化です。アポトーシスが活性化されると、Caspaseは複数のタンパク基質を一斉に切断して、細胞の構造と機能を喪失させ、最終的に細胞死に至らしめます。特に、Caspase8、-9および-3はアポトーシスに関与し、Caspase9はミトコンドリア経路、Caspase8はFas/CD95経路、そしてCaspase3はより下流で働き、複数の経路によって活性化されます。

BD バイオサイエンスは、フローサイトメトリー、イメージング、ELISAなどで使用できる様々な抗体から、個々の蛍光発生ペプチド基質や阻害剤、キット、すぐに使えるアッセイプレートまで、Caspase活性の測定における幅広いツールを提供いたします。

Caspase-3の切断/阻害反応

抗 活性型Caspase-3抗体を用いた、アポトーシスを起こしている細胞と起こしていない細胞集団のフローサイトメトリー分析

全体像をつかむために

CaspaseとAnnexin Vの他にも、Bcl-2ファミリー、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリー、PARP、シグナル伝達分子など、アポトーシス研究に重要ないくつかのタンパクが有ります。

CaspaseとAnnexin Vの他にも、Bcl-2ファミリー、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリー、PARP、シグナル伝達分子など、アポトーシス研究に重要ないくつかのタンパクが有ります。BCL2ホモロジー(BH3)ドメインの存在によって同定されるBcl-2ファミリーは、アポトーシスの主要な制御因子です。例えば、Bcl-2はミトコンドリア膜に付随しミトコンドリアからのCytochrome cの放出を阻害することで、アポトーシスから細胞を守ります。対照的に、Bax等の他のBcl-2ファミリーメンバーはアポトーシスを促進します。癌では、Bcl-2レベルが上昇していることが報告されています。

TNFRファミリーは、CD95を含む多くのメンバーを有し、構造によって3つの主要グループに分けることが出来ます。TNFR経路を介したシグナル伝達はアポトーシスを引き起こします。

PARPは、DNA鎖の切断によって活性化されるDNA修復酵素です。カスパーゼ-3によりPARPが24-および89-kDaの断片に切断されると、PARP酵素は失活します。

アポトーシス、細胞周期、およびDNA損傷の同時解析

アポトーシスと細胞増殖アッセイは、ガンの基礎研究および創薬に特に有用です。サンプルの処理やタイミング、サンプル自体の可変性によって、異なる実験間のデータ比較が困難なケースがあります。

マルチカラーフローサイトメトリーはこの困難なケースに対応可能で、アポトーシスと細胞増殖の研究ツールとして非常に優れています。関連のあるマーカーを、細胞の表現型マーカーと組み合わせて、細胞集団の中の一部で起こる事象を調べることが可能です。リン酸化タンパク質に対する抗体は、リン酸化事象を調べるのに使用できます。

トポイソメラーゼIの強力な阻害剤であり、アポトーシスを誘導するカンプトテシンで処理したJurkat細胞の例

切断型PARPの免疫蛍光

CD4+マウス脾細胞を抗CD3/CD28抗体と培養した例

取り込まれたBrdUおよび総DNA量 (7-AAD)の染色による細胞周期解析

VPD450を用いて測定したIL-2産生と細胞増殖の相関関係

アフィディコリン(DNAポリメラーゼ阻害剤)で処理したHeLa細胞のBrdU染色による細胞周期解析

Annexin V -V450によるアポトーシス、壊死、および細胞死のモニター

抗 活性型Caspase-3抗体を用いた、アポトーシスを起こしている細胞と起こしていない細胞集団のフローサイトメトリー分析

トポイソメラーゼIの強力な阻害剤であり、アポトーシスを誘導するカンプトテシンで処理したJurkat細胞の例


For Research Use Only. Not for use in diagnostic or therapeutic procedures.