幹細胞研究

生細胞ソーティングのための細胞表面染色

各々の幹細胞やそこから派生した細胞は、それぞれ特徴的な表現型を示します。細胞内の解析は透過処理を必要とするので、生細胞集団を分取しさらに分析する際には、表面マーカーが必須です。 FACSでのソーティングは、更なるアプリケーションで解析するために、大量に対象とする細胞をソートしたり単一細胞をソートする場合に非常に有用です。


サンプル調製

幹細胞は接着性である傾向があり、3次元構造にて成長できます。フローサイトメトリー解析では、シングルセルに細胞を調製するため、酵素(BD™ Accutase細胞剥離剤、あるいはトリプシンなど)を用いたりや機械的にスクラッピングして剥離します。酵素を用いた手法は、タンパクエピトープを切断したり修飾する場合があり、したがって、抗体の結合を妨げる可能性があるので、測定する表面マーカーについて評価しなくてはなりません。BD™ Accutaseは、トリプシンや機械的なスクラッピングよりマイルドな剥離ができるため、広範に応用できる傾向があります。

モノクローナル抗体

細胞を剥離し、洗浄したら、抗体で染色します。BD バイオサイエンスは、幹細胞研究に必要な、高品質で幅広い製品ラインを提供しています。様々な確立されたマーカーを始めとして、機能的に重要な新たなマーカーに対応します。 特に、抗体試薬は、高付加価値ポリマー技術を応用した高輝度色素BD Horizon Brilliant™シリーズのラインアップが加わったことで、レアポピュレーションの解析や、弱陽性のポピュレーションの解析が簡単且つ、高い精度で得ることが可能になりました。 また、使い易いReady to useの BD Stemflow™ キットやカクテル抗体もご用意しています。

幹細胞とその派生細胞の代表的表面マーカー

ヒトマーカー マウスマーカー BD Stemflow™及びその他のキット カタログ番号
多能性幹細胞(ESCs 及び iPSCs)

陽性: Alkaline Phosphatase, SSEA-4, SSEA-3, TRA-1-81, TRA-1-60

陰性: SSEA-1

陽性: SSEA-1 ヒト iPSC ソーティング&解析キット 562626
ヒト多能性幹細胞ソーティング&解析キット 560461
ヒトおよびマウス多能性幹細胞解析キット 560477
造血幹細胞 (HSC)

陽性: CD34, CD49f, CD90

陰性: CD38, CD45RA, Lineage*

陽性: CD150, c-Kit, Sca1

陰性: CD34, CD41, CD48, Lineage

BD Pharmingen™ Human Lineage Cocktail 4 562722
マウス造血幹細胞分取キット 560492
間葉系幹細胞(MSC)

陽性: CD44, CD73, CD90, CD105, CD146, CD271

陰性: CD11b, CD19, CD31, CD34, CD45, CD144, HLA-DR

陽性: CD29, CD44, CD90, CD105, CD106, Sca-1

陰性: CD11b, CD31, CD45, Ter-119

ヒトMSC解析キット 562245
ヒト間葉系幹細胞系列カクテル抗体 562530
神経幹細胞(NSC)

陽性: CD15mid, CD24, CD184

陰性: CD44, CD271

ヒト神経系細胞ソーティングキット 562271
ニューロン

陽性: CD15low, CD24

陰性: CD44, CD184

ヒト神経系細胞ソーティングキット 562271
腫瘍
CD15, CD24, CD34, CD44, CD45, CD49f, CD166, CD326, CD338, Her-2/Neu, Lgr5

* Human lineage (lin) markers: CD2, CD3, CD4, CD7, CD8, CD10, CD11b, CD14, CD19, CD20, CD56, CD235a

造血幹細胞の表現型

造血系の細胞系列は、表面マーカー表現型が広く知られており、各細胞サブセットの分取も標準的な手法が確立されています。 造血幹細胞(HSC)は、正常骨髄機能を補完できることから、現在幹細胞研究において注目を集めている領域です。

歴史的には、HSCはCD90及びCD34の発現が陰性である細胞系列として同定されてきました。1 今日では、自己再生能力のあるlong-term HSCs(LT-HSC)を濃縮するためにマーカーが追加されています。これらのマーカーには、CD38,2 CD45RA,3 、最近ではCD49fがあります。4 近年では、LinCD34+CD38CD90+CD45RACD49f+ の表現型を示す細胞の約10% が長期にわたって自己再生する能力を維持していることがマウスモデルにて報告されています。4

LT-HSCのゲーティング戦略
LT-HSCのゲーティング戦略
凍結ヒト臍帯血単核球(Stem Cell Technologies社)を、BD IMag™ human lineage cell depletion set(Cat. No. 560030)を使って濃縮し、抗体で染色し、BD LSRFortessa™ フローサイトメーターで分取および解析を行った。A. 始めに、デブリスを除去するために、散乱光に基づいてゲートした。 B. 次に、lineage-陰性 (CD2, CD3, CD4, CD7, CD8, CD10, CD11b, CD14, CD19, CD20, CD56, CD235a) の生細胞を、生死判別試薬7-AADとBD Pharmingen™ human lineage cocktail 4 キット(Cat. No. 562722)を用いてゲートした。さらに、 濃縮したLT-HSC集団を同定するため、 (C)CD34+CD38でゲート後; (D) CD90+CD45RA(展開したゲート) ; 最後に(E) CD49f+でゲーティングした。 これにより、高濃縮したLT-HSC集団を分取することができた。なお、細胞表面マーカーの組合せについては、(F)でゲーティングヒエラルキーとしてまとめた。

参考文献

1. Baum CM, Weissman IL, Tsukamoto AS, Buckle AM, Peault B. Isolation of a candidate human hematopoietic stemcell population. Proc Natl Acad Sci U S A. 1992;89:2804-2808.

2. Bhatia M, Wang JC, Kapp U, Bonnet D, Dick JE. Purification of primitive human hematopoietic cells capable of repopulating immune-deficient mice. Proc Natl Acad Sci U S A. 1997;94:5320- 5325.

3. Majeti R, Park CY, Weissman IL. Identification of a hierarchy of multipotent hematopoietic progenitors in human cord blood. Cell Stem Cell. 2007;1:635-645.

4. Notta F, Doulatov S, Laurenti E, Poeppl A, Jurisica I, Dick JE. Isolation of single human hematopoietic stem cells capable of long-term multilineage engraftment. Science. 2011;333:218-221.