Stem Cell Research

フローサイトメトリーは、幹細胞およびそれらから派生した細胞の特性評価、解析および分取を行うための極めて有用な方法です。

幹細胞領域での近年の発見は、再生医療における多能性幹細胞の重要性が再認識され、正常および疾病の過程についての研究者の理解も進みました。しかし、分化している培養細胞特有の不均一性は、依然として幹細胞研究における主要な課題であることに変わりはありません。

フローサイトメトリーは、ヘテロな細胞集団をシングルセルレベルで研究することが出来るという点に大きな特徴があります。ウェスタンブロットや細胞イメージングなどの手法とは対照的に、ヘテロな細胞集団を精査し、その中の亜集団の解析が可能です。

複数の蛍光標識抗体を用いることにより、分化している培養中の幹細胞について、信頼性の高い統計データを得ることができます。さらに、幹細胞や分化した細胞を、プライマリー組織や多種多様なin vitroの細胞集団から分離することも可能です。

Overview Surface Staining Intracellular Staining Screening

造血幹細胞研究における課題「細胞の不均一性」に取り組むツール”フローサイトメトリー”

新たな幹細胞や細胞系列同定の鍵となる発見へ有用な手法


様々な細胞表面や細胞内マーカーを利用することで、幹細胞が多能性を維持しているかどうか解析することができます。これには、蛍光色素結合抗体を使用します。幹細胞は、3種の一次胚葉および分化組織に分化しますが、その発現パターンの変化は抗体を使用して観察することができます。また、細胞表面マーカーを利用して細胞分取することで、更なる培養実験を行うことができます。さらには、BD Lyoplate™ 細胞表面スクリーニングパネルのように、網羅的な解析を行い、薬剤の影響を観察したり、細胞集団の発現系を絞り込んで行くことにも利用できます。

BD バイオサイエンスは、様々な条件下で検証した高品質抗体や緩衝液などの製品と、プロトコールやアプリケーションを統合し、幹細胞研究をサポートしています。幹細胞を特性評価し、解析し、ソーティングする研究者をサポートする高度な技術とワールドクラスのサービスの融合なのです。

生細胞ソーティングのための細胞表面染色

各々の幹細胞やそこから派生した細胞は、それぞれ特徴的な表現型を示します。細胞内の解析は透過処理を必要とするので、生細胞集団を分取しさらに分析する際には、表面マーカーが必須です。 FACSでのソーティングは、更なるアプリケーションで解析するために、大量に対象とする細胞をソートしたり単一細胞をソートする場合に非常に有用です。


サンプル調製

幹細胞は接着性である傾向があり、3次元構造にて成長できます。フローサイトメトリー解析では、シングルセルに細胞を調製するため、酵素(BD™ Accutase細胞剥離剤、あるいはトリプシンなど)を用いたりや機械的にスクラッピングして剥離します。酵素を用いた手法は、タンパクエピトープを切断したり修飾する場合があり、したがって、抗体の結合を妨げる可能性があるので、測定する表面マーカーについて評価しなくてはなりません。BD™ Accutaseは、トリプシンや機械的なスクラッピングよりマイルドな剥離ができるため、広範に応用できる傾向があります。

モノクローナル抗体

細胞を剥離し、洗浄したら、抗体で染色します。BD バイオサイエンスは、幹細胞研究に必要な、高品質で幅広い製品ラインを提供しています。様々な確立されたマーカーを始めとして、機能的に重要な新たなマーカーに対応します。 特に、抗体試薬は、高付加価値ポリマー技術を応用した高輝度色素BD Horizon Brilliant™シリーズのラインアップが加わったことで、レアポピュレーションの解析や、弱陽性のポピュレーションの解析が簡単且つ、高い精度で得ることが可能になりました。 また、使い易いReady to useの BD Stemflow™ キットやカクテル抗体もご用意しています。

幹細胞とその派生細胞の代表的表面マーカー

ヒトマーカー マウスマーカー BD Stemflow™及びその他のキット カタログ番号
多能性幹細胞(ESCs 及び iPSCs)

陽性: Alkaline Phosphatase, SSEA-4, SSEA-3, TRA-1-81, TRA-1-60

陰性: SSEA-1

陽性: SSEA-1 ヒト iPSC ソーティング&解析キット 562626
ヒト多能性幹細胞ソーティング&解析キット 560461
ヒトおよびマウス多能性幹細胞解析キット 560477
造血幹細胞 (HSC)

陽性: CD34, CD49f, CD90

陰性: CD38, CD45RA, Lineage*

陽性: CD150, c-Kit, Sca1

陰性: CD34, CD41, CD48, Lineage

BD Pharmingen™ Human Lineage Cocktail 4 562722
マウス造血幹細胞分取キット 560492
間葉系幹細胞(MSC)

陽性: CD44, CD73, CD90, CD105, CD146, CD271

陰性: CD11b, CD19, CD31, CD34, CD45, CD144, HLA-DR

陽性: CD29, CD44, CD90, CD105, CD106, Sca-1

陰性: CD11b, CD31, CD45, Ter-119

ヒトMSC解析キット 562245
ヒト間葉系幹細胞系列カクテル抗体 562530
神経幹細胞(NSC)

陽性: CD15 mid, CD24, CD184

陰性: CD44, CD271

ヒト神経系細胞ソーティングキット/td> 562271
ニューロン

陽性: CD15 low, CD24

陰性: CD44, CD184

ヒト神経系細胞ソーティングキット 562271
腫瘍
CD15, CD24, CD34, CD44, CD45, CD49f, CD166, CD326, CD338, Her-2/Neu, Lgr5

* Human lineage (lin) markers: CD2, CD3, CD4, CD7, CD8, CD10, CD11b, CD14, CD19, CD20, CD56, CD235a

造血幹細胞の表現型

造血系の細胞系列は、表面マーカー表現型が広く知られており、各細胞サブセットの分取も標準的な手法が確立されています。 造血幹細胞(HSC)は、正常骨髄機能を補完できることから、現在幹細胞研究において注目を集めている領域です。

歴史的には、HSCはCD90及びCD34の発現が陰性である細胞系列として同定されてきました。 1 今日では、自己再生能力のあるlong-term HSCs(LT-HSC)を濃縮するためにマーカーが追加されています。これらのマーカーには、CD38, 2 CD45RA, 3 、最近ではCD49fがあります。 4 近年では、Lin CD34 +CD38 CD90 +CD45RA CD49f + の表現型を示す細胞の約10% が長期にわたって自己再生する能力を維持していることがマウスモデルにて報告されています。 4

LT-HSCのゲーティング戦略


参考文献

1. Baum CM, Weissman IL, Tsukamoto AS, Buckle AM, Peault B. Isolation of a candidate human hematopoietic stemcell population. Proc Natl Acad Sci U S A. 1992;89:2804-2808.

2. Bhatia M, Wang JC, Kapp U, Bonnet D, Dick JE. Purification of primitive human hematopoietic cells capable of repopulating immune-deficient mice. Proc Natl Acad Sci U S A. 1997;94:5320- 5325.

3. Majeti R, Park CY, Weissman IL. Identification of a hierarchy of multipotent hematopoietic progenitors in human cord blood. Cell Stem Cell. 2007;1:635-645.

4. Notta F, Doulatov S, Laurenti E, Poeppl A, Jurisica I, Dick JE. Isolation of single human hematopoietic stem cells capable of long-term multilineage engraftment. Science. 2011;333:218-221.

転写因子解析のための細胞内染色

細胞内タンパクがどのような機能を担っているかを研究する上で、スピーディ且つ統計的に細胞内の事象を捉えるにはフローサイトメトリーは必須です。拡張することを可能にします。分化経路を考えるにあたって、重大な意味を持つ時点、マーカー、および細胞比率を同定するため、細胞表面染色と組み合わせて解析することができます。細胞内染色のプロトコールでは、細胞質および核へ抗体がアクセスするよう、細胞を固定および膜透過処理する必要があります。ただし、固定は事実上細胞を殺すので、細胞内染色を行うと生細胞ソーティングできません。


サンプル調製

細胞内染色でも、表面染色同様、酵素的または機械的方法によってシングルセルの細胞浮遊液を調製しなくてはなりません。BD Accutaseは、細胞凝集を防ぐのに役立ち、表面タンパクを維持することから推奨されます。 細胞表面染色後、固定および膜透過処理し、細胞内抗原に対する蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメーターで解析します。

透過処理や染色条件を最適化するため、BDは数種類のキットを開発しました。キットには、様々な条件で検証した抗体および緩衝液、プロトコールなどが含まれています。

幹細胞とその派生細胞の代表的細胞内マーカー

細胞の種類 細胞内マーカー BD Stemflow™ キット カタログ番号
胚性幹細胞(ESC),人工多能性幹細胞(iPSC) Nanog, Oct3/4, Sox2 ヒト多能性幹細胞転写因子解析 キット 560589
マウス多能性幹細胞転写因子解析 キット 560585
神経幹細胞(NSC) Nestin, Pax6, Sox1, Sox2 ヒト神経系解析 キット 561526
アストロサイト GFAP ヒト神経系解析 キット 561526
ニューロン Doublecortin ヒト神経系解析 キット 561526
初期膵臓内胚葉 FoxA2, Pax6, Pdx1, Sox17 ヒト内胚葉分化解析 キット 562496
後期膵臓内胚葉 NeuroD1, Nkx6.1
心臓細胞 cTNI, GATA4, Islet-1, Myosin Heavy Chain
肝細胞 AFP, GATA4

幹細胞の分化

ヒト多能性幹細胞が多様な細胞に分化する能力は、発生生物学における中心的なトピックであり、再生医療や細胞治療への応用が期待されています。多能性の細胞が異なる系統に分化するにつれて、転写因子やその他のタンパクの発現が変化します。多項目のタンパクを同時に解析できるフローサイトメトリーは、細胞集団の相対数を捉えることに非常に優れた方法であり、分化プロトコールや分化能を比較や定量する解析に有用です。

例えば、哺乳類の胚発生において、胚体内胚葉は、肝臓、膵臓、および腸を形成します。 1 胚体内胚葉へ分化する間、転写因子Sox17およびFoxA2のレベルは上昇し、一方でNanog等の多能性マーカーは減少します。 2

神経幹細胞の神経系への分化も、マルチカラーフロー解析で観察できます。神経幹細胞(NSC)がニューロンに分化するにつれ、Nestinの発現は徐々に低下し、初期のニューロンマーカーであるDoublecortinダブルコルチン(DCX)の発現が上昇します。Nestinを発現し続ける細胞集団は、CD44を発現するグリア細胞集団になって行きます。

胚体内胚葉分化における転写因子の変化

神経系細胞分化における細胞内および表面マーカーの変化


参考文献

1. Murry CE, Keller G. Differentiation of embryonic stem cells to clinically relevant populations: lessons from embryonic development. Cell. 2008;132:661-680.

2. D’Amour KA, Agulnick AD, Eliazer S, Kelly OG, Kroon E, Baetge EE. Efficient differentiation of human embryonic stem cells to definitive endoderm. Nat Biotechnol. 2005;23:1534-1541.

細胞表面プロテオームの迅速かつ効率的なプロファイリングへ

幹細胞研究において直面する困難は、培養した細胞の分化の不均一さです。生細胞を、次の実験に使用するため、特定の細胞を分取するには、細胞表面の表現型を特定する必要があります。


BD Lyoplate™ Screening Panels は、フローサイトメーターやバイオイメージングを用いて、数百種類細胞表面マーカーを、効率的にプロファイリングできる包括的なシステムです。プロテオームを網羅解析することで、様々な機能解析、薬剤スクリーニング、In vivoの動物実験、細胞治療などを目的とした実験系の戦略を明確にすることができます。

プロテオームプロファイリングが低コストで実現

BD Lyoplate™ では、ヒトは242種類、マウスは176種類の細胞表面マーカーを測定できます。モノクローナル抗体を全て買い揃えなくても、実験可能なためコストを抑えることができます。マーカー抗体に加え、アイソタイプコントロール、2 次抗体試薬など必要な試薬が揃っています。次段階の大規模な実験への移行をスムーズにするため、スクリーニングパネルに含まれる全ての抗体は、BD バイオサイエンスで提供しています。

生産性を上げる96-wellマイクロプレート

抗体が予めプレートにセットされています。 また自動処理装置やマルチピペッティングに最適なフォーマットです。 さらには、ヒートマップ解析用のテンプレートもご用意しています。 実験に従事する時間を削減でき、ラボの生産性が向上します。

GFP やYFPと同時解析

二次抗体にAlexa FluorR 647™ 標識抗体を使用しています。 このため、GFP やEGFP、YFP 発現細胞をマーカー染色し、同時解析することが可能です。

安定性に優れた便利なフォーマット

抗体は凍結乾燥されています。 そのため、密封包装の状態であれば長期間室温で保管することができます。 また、プレート形式なので、冷蔵保存庫のスペースを節約できます。


ヒト(Cat. No. 560747) /マウス (Cat. No. 562208)

【構成品】

◆ マイクロプレート3 枚

※細胞表面マーカーに対する抗体, アイソタイプコントロールが予め分注されています。

※空のウェルは、追加して解析したいマーカーに利用することができます。

◆ Alexa Fluor® 647 標識二次抗体試薬

BD Lyoplateパネルを用いたフローサイトメトリー及びイメージスクリーニングに関する考慮事項

サンプルの種類 フローサイトメトリー イメージング
浮遊細胞
希少な細胞集団
サブポピュレーション解析
複数マーカーで共染色
レポーターライン
形態学的変化
細胞数の制限

神経幹細胞およびニューロンの特性評価と濃縮のためのスクリーニング

神経幹細胞およびニューロンの特性評価と濃縮のためのスクリーニング

神経系細胞のスクリーニング

多能性幹細胞由来の神経細胞集団は、ヒト疾患および発生の研究に重要です。多能性幹細胞は、自己再生するNSCsに分化させることができ、それはさらにニューロンとグリアのヘテロな集団に分化させることができます。1 更なる研究への鍵は、各々の細胞の表面マーカーの表現型を同定することです。

例では、BD Lyoplate™ ヒト細胞表面マーカースクリーニングパネル(カタログ番号560747)を用いて、NSCおよびニューロンの細胞表面表現型を同定しています。パネルAにおいて、神経系へ誘導をした培養細胞をフローサイトメトリーでスクリーニングし、NSCマーカーの候補をヒートマップ上で同定しました。得られたNSCの細胞表面表現型の CD184+CD44CD271CD24+CD15mid は、細胞内NSCマーカーを使って検証しました。この表現型を使って、ほぼ純粋なNSCの細胞集団をソートし、後にin vivoおよびin vitro両方での分化能を確認しました。

IパネルBにおいて、精製したNSCをニューロンおよびグリア細胞に分化させ、ニューロンを分取するための表面マーカーを同定するために、同じパネルを使ってイメージングによりスクリーニングしました。 ニューロンの形態学的な特徴を捉えることができ、特異的マーカーを共染色できることから、イメージングスクリーンを用いた。ニューロン表面表現型候補である、CD44CD184CD24+CD15low はフローサイトメトリーで検証し、ニューロンの作製に使用しました。ニューロン細胞の他、BD Lyoplate™ ヒト細胞表面マーカースクリーニングパネルは、多能性幹細胞由来の心筋細胞の細胞表面マーカーを同定するためにも使用されています。2 近年では、この方法がアルツハイマー病のヒト幹細胞モデルの開発に使用されました。3


参考文献

1. Yuan SH, Martin J, Elia J, et al. Cell surface marker signatures for the isolation of neural stem cells, glia and neurons derived from human pluripotent stem cells. PLoS One. 2011;6:e17540.

2. Uosaki H, Fukushima H, Takeuchi A, et al. Efficient and scalable purification of cardiomyocytes from human embryonic and induced pluripotent stem cells by VCAM1 surface expression. PLoS One. 2011;6:e23657.

3. Israel MA, Yuan SH, Bardy C, et al. Probing sporadic and familial Alzheimer’s disease using induced pluripotent stem cells. Nature. 2012;482:216-220.

LT-HSCのゲーティング戦略

胚体内胚葉分化における転写因子の変化

神経系細胞分化における細胞内および表面マーカーの変化

神経幹細胞およびニューロンの特性評価と濃縮のためのスクリーニング

神経幹細胞およびニューロンの特性評価と濃縮のためのスクリーニング

ソーティング後H9 hESCの生存解析

ソーティング後H9 hESCの生存解析

ソーティング後H9 hESCの生存解析

ソーティング後H9 hESCの多能性解析

ソーティング後H9 hESCの多能性解析

BD Matrigel matrixを用いhESCを培養したバイオイメージング解析

リソース

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アプリケーションノート

製品カタログ

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ポスター

製品Information Sheet

製品リスト

プロトコール

ツール

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