幹細胞研究

転写因子解析のための細胞内染色

細胞内タンパクがどのような機能を担っているかを研究する上で、スピーディ且つ統計的に細胞内の事象を捉えるにはフローサイトメトリーは必須です。拡張することを可能にします。分化経路を考えるにあたって、重大な意味を持つ時点、マーカー、および細胞比率を同定するため、細胞表面染色と組み合わせて解析することができます。細胞内染色のプロトコールでは、細胞質および核へ抗体がアクセスするよう、細胞を固定および膜透過処理する必要があります。ただし、固定は事実上細胞を殺すので、細胞内染色を行うと生細胞ソーティングできません。


サンプル調製

細胞内染色でも、表面染色同様、酵素的または機械的方法によってシングルセルの細胞浮遊液を調製しなくてはなりません。BD Accutaseは、細胞凝集を防ぐのに役立ち、表面タンパクを維持することから推奨されます。 細胞表面染色後、固定および膜透過処理し、細胞内抗原に対する蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメーターで解析します。

透過処理や染色条件を最適化するため、BDは数種類のキットを開発しました。キットには、様々な条件で検証した抗体および緩衝液、プロトコールなどが含まれています。

幹細胞とその派生細胞の代表的細胞内マーカー

細胞の種類 細胞内マーカー BD Stemflow™ キット カタログ番号
胚性幹細胞(ESC),人工多能性幹細胞(iPSC) Nanog, Oct3/4, Sox2 ヒト多能性幹細胞転写因子解析 キット 560589
マウス多能性幹細胞転写因子解析 キット 560585
神経幹細胞(NSC) Nestin, Pax6, Sox1, Sox2 ヒト神経系解析 キット 561526
アストロサイト GFAP ヒト神経系解析 キット 561526
ニューロン Doublecortin ヒト神経系解析 キット 561526
初期膵臓内胚葉 FoxA2, Pax6, Pdx1, Sox17 ヒト内胚葉分化解析 キット 562496
後期膵臓内胚葉 NeuroD1, Nkx6.1
心臓細胞 cTNI, GATA4, Islet-1, Myosin Heavy Chain
肝細胞 AFP, GATA4

幹細胞の分化

ヒト多能性幹細胞が多様な細胞に分化する能力は、発生生物学における中心的なトピックであり、再生医療や細胞治療への応用が期待されています。多能性の細胞が異なる系統に分化するにつれて、転写因子やその他のタンパクの発現が変化します。多項目のタンパクを同時に解析できるフローサイトメトリーは、細胞集団の相対数を捉えることに非常に優れた方法であり、分化プロトコールや分化能を比較や定量する解析に有用です。

例えば、哺乳類の胚発生において、胚体内胚葉は、肝臓、膵臓、および腸を形成します。1 胚体内胚葉へ分化する間、転写因子Sox17およびFoxA2のレベルは上昇し、一方でNanog等の多能性マーカーは減少します。2

神経幹細胞の神経系への分化も、マルチカラーフロー解析で観察できます。神経幹細胞(NSC)がニューロンに分化するにつれ、Nestinの発現は徐々に低下し、初期のニューロンマーカーであるDoublecortinダブルコルチン(DCX)の発現が上昇します。Nestinを発現し続ける細胞集団は、CD44を発現するグリア細胞集団になって行きます。

胚体内胚葉分化における転写因子の変化
胚体内胚葉分化における転写因子の変化
H9 ヒト胚性幹細胞(hESCs) (WiCell, Madison, WI) は、Cell) 、 D’Amour, et al2 のプロトコールに従い 内胚葉へ分化させた。分化した細胞は BD Stemflow™ human definitive and pancreatic endoderm analysis キット(Cat. No. 562496)を用いBD™LSRFortessa™ フローサイトメーターで測定した。 胚性幹細胞(A) は、胚体内胚葉(B)へ分化するにつれ、 Sox17及びFoxA2の発現強度が高くなる一方、Nanogは低くなることが示される。
神経系細胞分化における細胞内および表面マーカーの変化
神経系細胞分化における細胞内および表面マーカーの変化
無血清胚様体(SFEB)法によってH9 hESC由来NSCをニューロンおよびグリアに分化させ、BD Stemflow™ human neural lineage analysis キット (Cat. No. 561526)を使用して、BD LSRFortessaフローサイトメーターで解析した。A.分化が進むにつれ、Nestin発現は低下し、DCXの発現レベルが上昇した。B. Nestin+ 細胞は、時間と共にCD44とNestinを共発現するグリア細胞の様相を示した。

参考文献

1. Murry CE, Keller G. Differentiation of embryonic stem cells to clinically relevant populations: lessons from embryonic development. Cell. 2008;132:661-680.

2. D’Amour KA, Agulnick AD, Eliazer S, Kelly OG, Kroon E, Baetge EE. Efficient differentiation of human embryonic stem cells to definitive endoderm. Nat Biotechnol. 2005;23:1534-1541.