HIVとエイズ

抗体パネルにおけるポイント

マーカー分析では、ある系統の細胞に特異的で他の系統の細胞に存在しない、絶対的なマーカー(MoAb)を用いることが望ましい。しかし、理想的なマーカーは少ない。すなわち、使用するマーカーにより、シングルカラー解析では他の系統の細胞との反応を排除し難い。リンパ球サブセットスクリーニング検査に用いるマーカーパネル例を、表3に掲げた。

表3 リンパ球サブセットスクリーニング検査に用いるマーカーパネル

推奨法
Tube no.
2カラー解析 3カラー解析 4カラー解析
1 CD45 / CD14 i.n.c / i.n.c / i.n.c i.n.c / i.n.c / i.n.c / i.n.c
2 i.n.c / i.n.c CD45 / CD3 / CD4 CD45 / CD3 / CD4 / CD8
3 CD3 / CD4 CD45 / CD3 / CD86 CD45 / CD3 / CD19 / CD56 and / or CD1
4 CD3 / CD8 CD45 / CD3 / CD19  
5 CD3 / CD19 CD45 / CD3 / CD56 and / or CD16  
6 CD3 / CD56 and / or CD16    
京大法
Tube no.
末梢血解析:基本型 リツキサン療法対象:基本型 OKT3療法対象:基本型
1 cell only cell only cell only
2 CD3 / CD56 / CD19 CD20 / CD4 / CD19 CD5 / CD56 / CD19
3 CD3 / CD4 / CD8 CD3 / CD56 / CD8 CD8 / CD3 / CD4
京大法
Tube no.
肺胞洗浄液解析(末梢血以外) リツキサン療法対象:推奨法 OKT3療法対象:推奨法
1 cell only cell only cell only
2 CD45 / CD14 / CD33 CD3 / CD56 / CD45 CD5 / CD3 / CD45
3 CD3 / CD56 / CD19 CD20 / CD38 / CD19 CD5 / CD56 / CD19
4 CD3 / CD4 / CD8 CD3 / CD4 / CD8 CD5 / CD4 / CD8

i.n.c, isotypic negative control

1)陰性コントロールの必要性

非特異的反応の有無および陽性率算定のために、使用する抗体と同一サブクラスの陰性コントロール(isotypic negative control)が用いられる。CD25およびHLA-DRなどのように、陰性と陽性の蛍光ポピュレーションが判然としない際の指標となる(データ略)。実際には同一サブクラスの抗体のうちでもメーカーにより、また同一のメーカーであっても抗体により非特異的な反応が異なる場合がある。一般的には、IgG1のサブクラスで質のよい抗体を用いることにより、多くの非特異的反応を防ぐことができる。使用する抗体の特性を理解しておくことが重要である。したがって、通常用いられる多重解析パネルでは、細胞のみ(cell only negative control)でも問題は少ない。

2)多重解析の必要性

MoAbにより認識されるエピトープは、アミノ酸レベルで数個程度である。このため、認識されるエピトープが同一あるいは類似構造を有する場合には、抗原分子が異なっていても反応を示す。実際、表3に掲げたパネルのうち系統特異的なマーカーは、T細胞におけるCD3のみである。また、リンパ球サブセット検査においては、CD19もB細胞に特異的である。一方、CD4はCD3陽性のT細胞に反応を示すが、ゲート内に混入する単球と反応する。CD8の弱陽性部分は、NK細胞の一部に反応性を示す。また、B細胞の検出にCD20、NK細胞の検出にCD56 and / or CD16を用いた場合には、これらのマーカーがT細胞の一部と反応性を示す。したがって、一般的に行われるサブセット項目では、CD3との多重解析が必要となる。さらに、各試験管におけるCD3のデータを内部コントロールとして応用することにより、細胞調整を含めた精度管理の一助ともなるのである。このように、正確・詳細なリンパ球サブセットの検索には、2カラーなどの多重解析を駆使して、組み合わせの診断法をとるのである。

3)マーカーパネルの実際

リンパ球サブセット検査は、各細胞群の陽性率算定が目的となる。このため、ゲーティングおよび多重解析が重要になる。したがって、表3に掲げる推奨法はCD45を間接的あるいは直接的に組み合わせた多重解析法となっている。一方、本検査も経済効率が求められる。そこで、当室では前述のリンパ球サブセット検査のノウハウを活かしながら実施している。すなわち、末梢血では溶血に重点を置いた多重解析を基本型としている。BALFなど末梢血以外の検体は、症例ごとにサイトグラムのパターンが大きく異なる。粉塵、非血液細胞のリンパ球画分への混入も多い。また、肺癌などの固形腫瘍が検出される場合もある。したがって、CD45と骨髄単球系のマーカーを加味した多重解析としている。問題があれば白血球分類などのカルテを参照し、必要に応じて追加・確認試験を行っている。