HIVとエイズ

臨床応用例におけるポイント

末梢血のスクリーニング検査のみでは、治療の影響を受けるため病型診断は困難な場合が多い。したがって免疫能のモニタリング、治療効果の判定が主体となる。BALFはT細胞有意であり、BあるいはNK細胞が増加する際には悪性リンパ腫が疑われる。また、T細胞のCD4 / CD8比から以下の病型が示唆される。

  • CD4 / CD8比増加:ベリリウム肺、サルコイドーシス、肺結核、肺好酸球性肉芽腫症など
  • CD4 / CD8比低下:過敏性肺臓炎、BOOP( bronchiolitis obliteranswith organizing pneumonia )、喫煙者、ARDS( acute respiratorydistress syndrome)、ヒスチオサイトーシスX、膠原病肺など
1)HIV感染症におけるCD4陽性細胞数の算定

リンパ球サブセット検査では、陽性率のみならず絶対数算定の評価も重要となっている。特に、HIV(human immunodeficiency virus)感染症においてはCD4陽性率のみならず、CD4陽性細胞の絶対数を加味した病期・病態分類がCDCなどより提唱されている9)。図4にCD4陽性T細胞数測定例を掲げた。解析に際しては、陽性率算定、自動血球計数器、白血球分類を含めた総合的な精度管理が必要となる( dualplat-form method)。現在では、既知濃度ビーズとの同時測定によりFCMのみで算定が可能である(single plat-form method)10)。HIV感染症は、多剤併用療法HAART(highly active anti-retroviral therapy)の確実な導入および合併症の防止が重要となる。CD4陽性T細胞数(200 /μL未満)、HIV RNAウィルス量(5.5 × 104 copies / mL 以上)の検査などによりモニタリングされ、AC(asymptomatic carrier)、ARC(AIDSrelated complex)、AIDS(acquired immunodeficiency syndrome)の病態に応じた治療が実施される。

Lymphocyte reagent panel fig4

図4 HIV感染症におけるCD4陽性細胞数の算定例

HIV感染症(AIDS例)における、末梢血CD4陽性細胞数の解析例を示す。モノクローナル抗体はFITC標識抗CD3抗体、PE標識抗CD4抗体、抗CD56抗体、PC5標識抗 CD8抗体、抗CD19抗体を用い、FACS Lysing Solutionで溶血処理を行った。CD4陽性細胞数は、以下に示すdual plat-form methodで算定した。
・CD4T細胞数=白血球数×リンパ球陽性率×CD4T細胞率(A, 矢印)
リンパ球陽性率は、図2に示すCD45とSSCの組合せから算出してもよい。赤色: CD4T細胞、黄色:CD8T細胞、緑色:T細胞、水色:B細胞、桃色:NK細胞.

2)抗体療法におけるモニタリング

様々な治療法の導入にともない、検査が困難になる局面が増加している。上述の、感染症などに使用されるG-CSFの投与も一例である。キメラ・ヒト化抗体による抗体療法の開発、臨床応用も活発に行われている11)。特に、当院では移植医療における実施例が多い。抗CD20抗体( Rituximab)療法はB細胞性悪性リンパ腫のみならず、ABO不適合移植にも適用されている12,13)。マーカー分析により、本治療法の選択と効果判定がなされる。抗体療法中は対応する抗原分子が検出不能となり、十分な注意が必要である。また、移植例の中には重度の拒絶反応を示す場合もある。この際には、OKT3療法も実施される。図5は、経過を追って観察したOKT3療法中の解析例を示す。経過にともないCD3の発現( 蛍光強度)および陽性率の低下を認め、治療効果が確認される。しかし、本例においても治療情報がなければT細胞性の造血器悪性腫瘍と誤ることがある8,14)。マーカー分析においては、検査の目的、治療法および使用薬剤の情報が重要なのである。表3に掲げるように、治療法に応じたマーカーパネルの設定が必要となる。

Lymphocyte reagent panel fig5

図5 OKT3療法中のリンパ球サブセット解析例

腎臓移植後症例における、OKT3療法中のリンパ球サブセット解析例を示す。モノクローナル抗体はFITC標識抗CD5抗体、抗CD8抗体、PE標識抗CD3抗体、抗CD2抗体、PC5標識抗CD4抗体、抗CD19抗体を用い、Q-Prep systemで溶血処理を行った。図中の赤色表示は、リンパ球画分における蛍光パターンを示す。A, DはOKT3療法前、B, C, E, FはOKT3療法3日後の解析結果を示す。経過にともないCD3の発現(蛍光強度)および陽性率の低下を認め、治療効果が確認される。治療中のCD3陽性率は本来の実線マーカーでは2.4%となるが、点線マーカーの位置に移行させることにより32.2%の参考値が得られる。蛍光強度の低下により陽性率の算定が不可能な場合もあり、正確なT細胞陽性率はCD5あるいはCD2を用いる。しかし、CD5はB細胞の一部、CD2はNK細胞と反応することに注意が必要である。

おわりに

モノクローナル抗体とフローサイトメーターを用いた細胞分析検査のリンパ球サブセットスクリーニング検査編として概説した。検査におけるポイントは、完全な溶血、適切な多重解析および臨床情報にある。原発性免疫不全症の検査も有用であり、多くの病型診断が可能である15-18)。当室では表4に掲げる抗体パネルを実施しているが、臨床との協議により参照・選択すればよい。易感染症例の病態・病型診断に活用されれば幸いである。


表4 原発性免疫不全症スクリーニング検査に用いるマーカーパネル(京大法)

Lymphocyte clinical application fig4